BRAND STORYブランドストーリー

「僕が初めてガーナの生産者を尋ねたのは、2004年の事です。穴が開いてびりびりに破れたTシャツを着てましたね。どこかから寄付されたような、なんて書いてあるかわからないTシャツ。よくあることではありますが…コンゴやシェラレオネまで行くと、サンダルも履いていないんですよね。アメリカのナッツ農家はとても裕福なのに、カカオの農家は貧しい。どうにかできないかと思いました」

 

 

こう語るのは、株式会社立花商店でカカオのトレーダーを務める生田渉さん。15年以上世界のカカオ生産国を旅し、世界中のチョコレート企業にカカオ豆を販売してきました。
その日暮らしの人が多いカカオ農家の生活水準向上のため、生田さんはこれまで様々な活動をしてきました。カカオ豆の質を吟味し、適正なマーケットで、適正な価格で売るという事もその一つ。しかし今、『高品質なカカオ豆を大きな規模で買える市場が、圧倒的に不足している』と壁を感じています。

「これまでは大量生産・大量販売型の、アフリカでとれる安定した品質のものが主流でした。そこに、Bean to Bar向けの少量多品種の新しいマーケットが出てきましたが、そこに期待感を持った生産者も同時に増えました。残念ながら、高品質カカオのマーケットはまだ全ての生産者の受け口になるほどの大きさではありません。いい豆なのに買い付けを断ったり、10トンのうち1トンしか買えないことも多いですし、そこまでの品質が必要じゃないマーケットに売らざるを得ないこともあります」

 

 

現在、チョコレートの消費のマーケットは二極化しています。1枚100円の大量生産の板チョコと、ショコラティエの1枚1,000円の板チョコ。その中間である、「コンビニよりは高いけど、ハッとする美味しさ。どうしてこんなに美味しいんだろう、と気になって、原産国に目を向けるようなチョコレート」を作りたい。そんな思いで立ち上げたのが、『チョコレートジャングル』というブランドです。
今よりもっと美味しいチョコレートが、身近に、手軽に手に取れる未来が来るかもしれません。

チョコレートジャングルの商品一覧はこちら  

カカオ豆市場のこれまで

 

 

世界のカカオ市場は520万トン。そのうち、『マス向け』と呼ばれる一般的な品質のカカオ豆が、その7~8割を占めています。このカカオ豆生産に携わる農家は厳しい生活をしている人が多く、児童労働の問題や離農が進みカカオ豆の供給が減るという危機感からも、フェアトレードの活動や大手メーカーによる農家の支援が進められてきました。

生田さんは立花商店を通じて農家への支援活動を展開。農家への技術指導や金銭的支援を通じて作られた最高品質のカカオ豆は、これまでにない豊かで生き生きとした風味、複雑な味わいのBean to Bar市場へ供給されてきました。

 

 

しかし、Bean to Barの市場はまだまだ規模が小さく、わずか5万トン程度。一方で高品質なカカオ豆は市場全体の3割程度生産されています。残念ながらその品質を加味した価格で買い上げられるのは1割程度しかなく、残りは一般的な品質の豆と一緒にされ、低価格商品原料のマーケットへと流れています。「市場さえあれば、品質の高い豆はもっとたくさん生産できる」と生田さんは言います。「カカオバター向けの市場しかないから、発酵工程を経ずに出荷されるケースも。豆のポテンシャルは高く、発酵したら美味しいカカオ豆ができるのに」

そんな背景のもと立ち上げられたブランドが『チョコレートジャングル』です。
大量生産・大量販売品でもなく、一握りのBean to Bar市場でもない、購買力のある高品質カカオ市場開拓を目指します。

『チョコレートジャングル』の立ち上げ

 

チョコレートジャングルはガーナとフィリピンのセブ島で自社農園の運営を行うとともに、世界中から買い付けた高品質カカオ豆を用いた商品開発を行います。
キーワードは「何が出てくるかわからない、ワクワク感とドキドキ感」。
人が計画的に作ったものではなく、自然が作り出す豊かな意外性、それがもたらす感動にフォーカスした商品づくりで、産地や農園の人々に目を向けてもらい、生産者支援の必要性を訴えていきます。
「産地に行くと、現地の人はアーモンドと言い張っているけれどどう見てもアーモンドじゃないナッツとか、カカオのそばで生えている見たことのない果実とか、まだまだ私たちの知らない魅力が見つかります。そんなものを取り入れた商品づくりをしていきたいです」と生田さん。「世界中のレアなナッツをチョコ掛けしたお菓子」や「カカオパルプを使ったチョコレート」など、夢が膨らみます。

 

 

第1弾の商品は14か国の産地のカカオ豆を食べ比べられるテイスティング・BOXです。 同じカカオ豆でも、産地や作り手が異なる事でいかに味わいが変化するかを体験できます。 ブローシャ―には1つ1つのチョコレートに使われている豆の産地、農園の名前が書かれており、質のいいカカオ豆を生産している農家にフォーカスするのも狙いのひとつです。

『チョコレートジャングル』の社会貢献活動

もちろん、チョコレートジャングルの売上は生産者へと還元されていきます。
売上の一部で生産者のコミュニティを支援する。その時にチョコレートジャングルが大切にするのは、『迅速な支援を、小さくても、数多く』です。

 

 

「現在、チョコレート企業やNGOが中心となり、カカオの生産国での様々な問題解決に取り組んでいます。児童労働や環境問題の為に目標や行動計画が作成されて、徐々に実行に移されています。このような動きを加速するために、私たちは出来ることは何でもやっていくスタンスをとっています。カカオトレーダーとしてお客様と協力して、比較的大きな規模で社会貢献のプロジェクトを推進したいと思ってます。
一方で、完璧な支援というものはありません。地球規模や国単位の問題を解決に加え、このチョコレートジャングルは、生産者の声を最優先にしてスピード感をもった活動をします。大きな活動の中では、生産者一人一人までその成果が短期的には見えず、現地の人の期待に応えられないことも経験してきました。このブランドは、今日の売上で、明日生産者が『助かった!』と思えるような支援をすることに意義があります」

例えば、アフリカのある村では雨の度に川が氾濫してしまい、迂回して学校に行くには30kmもの道のりを歩かないといけない。「学校にいけない」の背景には、そんな地理的な足かせもあると生田さんは言います。この時コミュニティに必要な支援は、現地に駐在員を送り込み数年かけて教育を施すことより、数十万円を出資してコンクリの橋を架けてあげる事。アフリカ各国と日々取引をして、現地のパートナーや生産者と近い関係にいることと、小さな企業ならではの意思決定の速さやフットワークの軽さを活かして、自分たちが得意な事でチョコレート業界に貢献できることを追求します。

 

Asobune村での井戸設置

カカオを取り巻く様々な問題についても、啓発活動を行う生田さん。2020年には(公社)国際農林業協力に『商品作物としてのカカオの現状と課題』と題した論文を寄稿し、非実需者による先物取引により生産者の収入が安定しない構造を解説しています。

「生産者の収入・関税・工場での製品加工代など、1枚のチョコレートのどこにどれだけのコストがかかっているのか、情報開示も進めていきたい。SDGsやフェアトレードを謳う会社も多いけれど、実際どうなっているかは企業に聞かないとわからない。そういう情報はネットにはほとんど落ちていないから、自分たちが開示して、関心を持ってもらうのが必要だと思います」

生産者と自然環境の未来の為に。『たまの贅沢品』でも『いつもの奴』でもない、『良いもの』を。新しい市場作りにチョコレートジャングルは挑戦します。

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