カカオとは?どこで採れるの?どんな植物?徹底解説!

  カカオは、チョコレートやココアの原料として知られています。また、最近ではカカオを焙煎して砕いただけのカカオニブなどの食材も人気です。 ここでは、カカオがどのような植物なのかについて解説します。チョコレートの原料になるカカオ豆をはじめ、カカオの木や花の特徴、産地についてまとめました。

カカオとは?

カカオとはアオギリ科テオブロマ属の植物で、1年を通して緑の葉をつける常緑樹の1種です。植物としての学名は「Theobroma cacao(テオブロマ・カカオ)」で、「Theobroma」はギリシャ語で神の食べ物という意味があり、「cacao」はアステカ王国で使われていたナワトル語でCacavaqualhitl(カカバクラヒトル)と呼ばれていたことに由来し、メキシコを征服したエルナン・コルテスが本国スペインにカカオの木をcacap(カカップ)と報告したことで、その文字が変化しcacaoになったと言われています。 因みに、日本でも聞き馴染みのある「cocoa(ココア)」は、カカオがヨーロッパで広まった当時、イギリスで「cacao」を英語で発音することが難しかったため、発音しやすいように音の組み合わせを変えて生まれた言葉です。

カカオとはどんな植物なのか?

カカオの木は高さ7メートルから10メートルほどで、平均気温が27度以上で最低気温が15度以上、かつ年間を通して気温が安定し、湿度の高い熱帯地域に生えます。発芽から4~5年で実をつけるようになり、最も収穫量が増える最盛期は12~15年目ですが、その後も50年以上実をつけます。また、湿気のある場所が適しているため、乾燥に弱く、カカオよりも背丈が大きく、直射日光や風からカカオの木を守るシェードツリー(日陰木)等と一緒に混植して栽培されています。

カカオの花の特徴

カカオの花は3センチほどの大きさで、一度開花した後は年中咲き続けます。花は、木の幹から直接生える「幹生花(かんせいか)」であり、雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)が同じ花の中に共存する「両性花(りょうせいか)」ですが、蚊を媒介として受粉する「虫媒花(ちゅうばいか)」のため、異系交配による遺伝上の優位性を選択出来るよう、同じ木の花ではなく異なる木の花への受粉を促す仕組みになっています。 また花は白色が基本ですが、品種によっては赤味や黄色味を帯びるものもあります。

カカオにはどのような品種があるのか?

カカオの主な品種は、病気に強く世界的に広く栽培されている「フォラステロ種」、病気に弱く希少性が高い「クリオロ種」、フォラステロ種とクリオロ種を掛け合わせた「トリニタリオ種」の3系統に分かれるというのが一般的ですが、前述した通り、遺伝上の優位性を選択できるように異系交配を繰り返しており、実際には名前を付けられないほど様々な交雑種が世界中で生まれ続けています。 また2008年、USDA(米国農務省)のJuan Carlos MotamayorとMars(米国の大手食品企業)の研究員によるグループの発表によると、『1,241種類の異なる地理的起源のサンプルを採取した結果、カカオは10種類の遺伝グループに分けられる』と結論付けています。このように、カカオの品種や起源についてはまだまだ分かっていないことが多く、品種だけを切り取って品質に結び付けることは難しい状況となっています。

カカオの実の特徴

カカオの実はカカオポッドと呼ばれており、15センチから30センチほどの大きさがあります。全般的にラグビーボールのような楕円形をしていますが、細長いものや丸いものなど個性があり、表面もツルンとしたものからゴツゴツとしたものまで、品種によってかなり差異が現れます。また、カカオポッドの色も様々で、黄、緑、赤、紫、オレンジ、青白、またはそれらのグラデーションで構成されており、バリエーションに富んでいます。 カカオポッドを割ると、中には果肉部であるカカオパルプと、種子であるカカオ豆が入っています。カカオパルプはチョコレート特有の香りの前駆体を生成するため、カカオ豆と共に発酵される他、それ自体が甘酸っぱい味わいのため、カカオパルプ単体でも利用・販売されています。

カカオ豆とは何か?

カカオ豆はカカオの種子で、品種や生育状況によって変わりますが、1つの実の中から20~40個ほど取ることができます。カカオ豆は前述の通り、カカオパルプとともに発酵させることにより、苦味や渋味を低減させ、チョコレートの香りの元となる前駆体を生成します。発酵と乾燥が終わったカカオ豆は長期保存が可能となり、その状態で世界中へと出荷されます。また、カカオ豆はカカオハスクと呼ばれる薄い殻に覆われており、焙煎してカカオハスクを取り除いた胚乳をすり潰して、カカオマスやチョコレートへと加工します。そして、カカオ豆の約半分はカカオバターと呼ばれる油脂分を含んでおり、カカオマスからカカオバターを抽出することで、残留物からココアパウダーを作ることができます。 カカオ豆にはタンパク質、脂質(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸)、糖質、食物繊維(リグニン、ヘミセルロー、セルロース、水溶性難消化性多糖類)、ミネラル類(カリウム、リン、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガン)、カカオポリフェノール、テオブロミン等が含まれており、栄養が豊富なだけでなく健康効果も期待されています。

カカオはどうやって栽培されているのか?

カカオはカカオポッドからカカオ豆を採種し、発芽させて苗から育てる場合もあれば、専門業者から苗木を購入し、農地に植え替えて育てる場合もあります。また、土に枝を挿して根を張らせる「挿し木」で増やす方法もあり、成木から採取した枝を挿し木した場合、苗から育てるよりも収穫までの期間を短縮できるメリットがあります。その他にも元々ある木に、別の木の枝を接着する「接ぎ木」もあります。これは収穫量のピークを過ぎた老木を台木にして、若い木の枝を接ぎ木して収穫量を増やしたり、病気に強い品種のカカオの木を台木にして、希少品種のカカオの木の枝を接ぎ木し、病気に耐性のある木を作って、効率よく希少品種を育てることもできます。 カカオのプランテーションでは、カカオのみを単一で植えるところも存在しますが、カカオは直射日光や強風に弱いため、シェードツリーを含む様々な木や植物を植え、カカオの木を保護するとともに、カカオの花の受粉を促す蚊が繁栄しやすい環境を作り、朽ちたり枯れた植物が土壌の養分になる相互関係を利用した、疑似森林の中で農業を行うアグロフォレストリー(森林農業)も広まっています。 アグロフォレストリーではその地域に根付いた植物を混植するのが一般的ですが、バナナやイモ類等の比較的直ぐに収穫できる短期作物や、パッションフルーツやパパイヤ、柑橘類、胡椒等の植えてから1~2年で収穫が始まり、その後数年間に亘って収穫できる慢性木本作物や果樹、植えてから数年から数十年で伐採できるチークやマホガニーといった材木用高木等の様々なサイクルの植物を植えることで、多様な換金作物による収入源の分散化を行い、天候不良や病気、害虫の蔓延を起因とする収入の減少に対してリスクヘッジを行うこともできます。また、アグロフォレストリーは森林を模倣して農業を行うため、近隣の動植物への影響が少なく、環境負荷を減らし生態系の維持にも効果的であると言われています。

カカオはどこで栽培されているのか?

現在、主にカカオを栽培している地域は、中米や南米北部、西アフリカ、東アフリカ、南アジア、東南アジア、オセアニアです。赤道を中心に南北20度の場所が「カカオベルト」と呼ばれ、カカオの生育に適した気候帯とされていますが、カカオの生育には気温や湿度等の様々な条件があり、その条件を満たせばカカオベルトの範囲を越えて栽培が可能となります。実際にカカオベルトの外にあるハワイや台湾等では、カカオの商業栽培が慣行的に行われており、日本では自然下でのカカオ栽培は難しいものの、小笠原諸島や沖縄でハウス等を使った疑似環境下でのカカオの商業栽培が行われており、現在も研究が進められています。

カカオの原産地と起源

カカオはベネズエラを中心としたオリノコ川流域で生まれたとされていますが、今現在も起源に関する研究が進められております。また、人類がカカオを消費していた歴史は古く、メキシコ南部、ホンジュラス、エルサルバドル、ベリーズ、グアテマラを中心としたメソアメリカ文明では、紀元前2000年頃からカカオの栽培や消費が行われていたことが分かっており、カカオの文化的起源はメソアメリカ文明だということがこれまでの定説でした。しかし2018年10月、アメリカとカナダを中心とした国際研究チームが、エクアドル南部、ペルーとの国境付近にあるマヨ・チンチペ文明で知られるサンタ・アナ・ラ・フロリダ遺跡で、出土した紀元前3300年前の土器から、『カカオ特有のデンプン粒と塩基配列を持つDNA、テオブロミンの残留物の3点が発見された』と発表しました。土器がボトルのような形状をしていることから、この頃からカカオは何らかの形で喫食されていたことが予想されています。この発表によりカカオの文化的起源は、中米を中心としたメソアメリカ文明からエクアドルを中心としたマヨ・チンチぺ文明ということに改められています。

まとめ

カカオの植物としての特徴や生産地について解説しました。世界中で親しまれるチョコレートですが、意外にもその原料であるカカオは様々な分野で研究段階で、分かっていないことも多いのが現状です。そんな不思議でロマンに溢れるカカオを正しく知り、より深く楽しむために本記事の情報を参考にしていただければ幸いです。 参考元 日本チョコレート・ココア協会 ダンデライオンチョコレート ジャパン 森永製菓株式会社 チョコレート検定 公式テキスト2022年版

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